宇宙の果てはこうなっている

第W章 「次元」の正しい理解の仕方

       
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【 第W章 −6】 簡易的な時空イメージ 

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 ちょっとややこしい言い方になりましたが、少し分かって頂けたでしょうか。これが宇宙を次元的にとらえたときの見方なのです。この先でまた、空間の歪みを含めた時空の概念図を提示できれば、もう少し詳しく分かっていただけるかなとも思います。

 それなのに、ああそれなのにです。今、私の手元にこんな広告パンフレットがあるんです。「どんな病気も治せる驚異の水、四次元の力、科学的に立証されたこの水のパワーであなたも健康に!」 ですって。

 郵便受けに勝手に入ってくるチラシのうちの一枚です。そりゃあ事故の後遺症や難病に日々苦しめられている人にとっては、どんなものにもすがりたい一心でしょう。

 でもねえ、次元時空の水? 何の科学で立証されたんですか。
 確かに 「病は気から」 と言われるように、何かを信じることによって精神的に安定感が得られ、病状が好転することは間々あることです。これを 「プラシーボ効果」 と言います。だからと言って 「四次元の力」 はやめてくださいよ。

 もうひとつ。これはテレビでやっていた 「超科学現象」 の紹介番組です。
 「私はこの箱の中に
四次元空間 を作ることに成功しました。」 おいおい、あんたが住んでる部屋かて立派に次元空間やて。
 何か得体の知れない不思議な物は、何でも 「四次元」 にしてしまえとでも言うんですかい。

 テレビ局って、採用試験の状況から言っても、どうしても文系学部出身の人が多くなるからこうなるんでしょうか。
 メディアの内容は、こども達にも大きな影響を与えています。もっとしっかりした科学的見地から責任ある検証をしてから放送せい。とこう言いたいところです。

 そこでさらに注目して欲しいのはですね、まあ、こんなえせ科学物はまだしも、いかにも科学文章のように装っていて、実はとんでもない論理を展開している書物も見かけるんですね。
 「ごめんやっしゃ。」
 例えばこのミンコフスキー空間の解釈についてですが、え、今なにか聞こえました?
 「こちらでよろしいんでっか。ごめんやっしゃ。」

 誰です。今ちょうど大事なところなんですが、何か御用ですか。
 「あぁ、遅うなってえらいすんませんなあ。車がポンコツやさかい、よう走らしませんのや。」

 あらぁ、誰かと思えば、これはこれは アルバート・アインシュタイン(18791955Albert Einstein さんじゃありませんか。ようこそお越し頂きました。

 「いや、ようこそってあんた。こないだあんだけ、ぜひ来てくれって言うてましたやんか。あれ真に受けてやって来ましたんやけど、お邪魔やったんと違いますか。」
 とんでもありません。邪魔どころか大歓迎ですよ。ちょうどいよいよ一般相対論の説明に入らなきゃと思っていたところなんですから。

 ところでアインシュタインさん、おたくってまさか大阪生まれだったんですか。
 「なにが大阪ですかいな。わては正真正銘、ドイツ生まれのスイス育ちでおま。みなさんよおく知ってまっしゃろ。」
 うわぁ、大変なことになった。ホントに来てくれちゃったよ、あのアインシュタインさんが。

 それにしてもやっぱりもじゃもじゃの頭、チャップリンみたいなちょび髭、雑誌のグラビアそのまんまじゃん。さらに甲高い声。でもまさか大阪弁とはねぇ。

 済みませんアインシュタインさん、実は次元の考え方と相対論について、たった今前半の説明が済んだところなんですが、これまでのところをちょっとご覧になっていただけませんか。おかしい所があったら指摘していただきたいんですが。

 「そんなもんどうでも宜しいやんか。それより今日は深川丼は出ないんでっか。1922 年に来日した際に、あの日目に食べさせてもろうた屋台の深川丼が、今でも忘れられませんのや。」
 はあ、深川丼ですか。何とか準備したいんですが、ここは九州ですよ。長崎の皿うどんで我慢してもらうというわけにはいきませんかねえ。

 

 ねえ、せめて最後の 「時空の本質」 のところだけでも読んでくれませんか。大御所であるアインシュタインさんがどう批評されるのか知りたいんですよ。
 「うわぁ、時空の本質やなんて、そんな小難しいこと、わてに聞かんといてぇな。」

 えーっ。あなた仮にも相対論の生みの親、あのアインシュタインさんでしょう。
 「『仮にも』 って何です。正真正銘、ドイツ語読みでは 『アルベルト・アインシュテイン』、英語読みでは 『アルバート・アインスタイン』 でんがな。それとな、相対性原理の生みの親は、わてとちゃいまっせ。
ガリレオ・ガリレイ (15641642) Galileo Galilei 師匠でおます。」

 とにかく助けてくださいよ。私の力不足で、読者の皆さんに納得してもらえるようなイメージ図をなかなか示せなくて、苦労しているんですよ。

 「えー面倒やなぁ。百科事典 Wikipedia にも紹介してある通り、わては 『生活には無頓着で、非常に面倒くさがり屋』 なんや。『洗濯用石鹸で顔を洗い、雑巾で顔を拭い、灰皿に食事を盛り付けると云う常識外れの行動もあった様である。』 ってところは、それの何処が悪いっちゅうねん、って突っ込みを入れたくもなりますんやけどな。」

 でも、こと物理の研究に対してはすごい集中力で没頭されるそうじゃありませんか。
 日本のアニメに出て来る 「天馬博士」 や 「お茶の水博士」 も、みんなあなたの風貌がモデルだったそうですよ。それだけ日本では科学者といえばアインシュタインなんですよ。

 「さよか。そこまでべんちゃら言われたらやりますけどな。皿うどんの準備、よろしう頼みまっせ。」

天馬博士(手塚治虫)
 べんちゃらじゃありませんって。チャンポンでも皿うどんでも、長崎の麺類はどれも美味しいですよ。おまけに接待役の私は佐世保のイケメンだし。

 「何の事やらさっぱりラーメン。それにしても難しソーメン。時空の図解でっか。そんなん苦手なんやけどなあ。」

お茶の水博士(手塚治虫)

 一応ローレンツさんの変換式は皆さんに紹介したんですが、運動する物体での時間の縮み具合ってのは、どうしても直感的な表現ができなくて。

 「んなもん、こうしたらええがな。今あんさんは地球の上でじいっと座っていまっしゃろ。」
 「はい。静止していますよね。地球から見ると。」
 「そやけどこういう風に、
実は時空の中を光の速さ C[m/s] で移動しておる んです。地球ごと。」

 はあ、縦軸一本ですね。静止している人も 3.0×108 [m/s] で時空を駆け抜けているんですよっと。
 えーっと私は 「第W章−3」 で、駅のホームに静止している人の時計を
T' で表したんですが、それがこの縦軸のベクトルだと思えば良いんですよね。

 「お好きなように。その地球から [m/s] で遠ざかるロケットの世界線は、こう書けば良いやおまへんか。」
 あ、斜めにベクトルをとって、その横軸の空間成分が
であれば良いということですか。

 「それを地球の側から測るとしたら、ほれ、てんてんてんっと。これが地球から見たロケットの中での経過時間でおます。」
 え、このベクトルの縦軸成分がですか。じゃあこれが列車の中の
に当たると。
 「さいでんがな。その比はどうなります。」

 えーと三平方の定理から 軸成分の長さは ですから、要するに単純な COSθですよね。  になります。
 「ほら、  でっしゃろ。」

 あ、ローレンツ変換だ。こんなに簡単で良いんですか。

 「皆さん難かしく考え過ぎですがな。地球も [m/s]、ロケットも [m/s] で時空の中を飛んでいるだけ。それを無理矢理に地球の基準で見るなら、これだけ時間が縮んで見えるということです。」

 うわー。何て簡単な話だ。なぜ相対論の解説書はこんなに簡単に説明してくれなかったんだろう。
 「要するに時間と空間が複合された中を、わて等はみな移動しているんやさかい、
空間を移動すればその分だけ時間移動成分が小そうなる というだけのことですがな。はい、済みましたで。はよ、皿うどん。」

 あ、アインシュタインさん、ちょっと待って下さいね。この時、ロケットの中にいる人から見ると、逆に自分は静止していて地球が [m/s] の速さで遠ざかっているように見えるんでしょう。

 「はいはい。そん時はロケットを基準として、こう書けば良いやないかい。」
 なるほど。今度は地球の時計の方が遅れているように見えると。

 「ロケットだってやはりちゃぁんと時空の中を [m/s] で移動してます。ローレンツの式はあくまでも一方から他方を眺めたときの、相対的な話なんや、ちゅうことで。さ、これでよろしいか。」

 いやあ、ありがとうございました。おかげでスッキリしましたぁ。えーっと、電話帳、電話帳っと。
 「え、これから出前の注文をするんでっか。殺生やな。もうとうの昔に準備は出来ておると思うとったがな。」

 良いじゃありませんか。人生焦ってばかりじゃ何も良いことありませんよ。
 あなたもカルフォルニア技術院の講演会でおっしゃっていたじゃありませんか。『私は天才ではありません。ただ、一つのことに長く付き合う事だけは人より自信があります。』 って。

 「かなわんなあ。どうでもええから、早よう、電話電話。」
 それにどうせここは山奥だから、出前が届くのも夕方遅くになります。きっと目一杯に伸びきった麺も、また風情があって良いもんですよ。
 「どーん、これじゃあ元気も電話。早く皿うどんさんにお会いんしたいん。」

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