宇宙の果てはこうなっている

第W章 「次元」の正しい理解の仕方

       
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【 第W章 −2】 電車の中と外の世界(しょにょ1) 

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  はーい、登場です。相対論解説文ではおなじみの定番、超高速電車でーす。
 ご覧の通り、外見は別に何と言うこともない平凡な格好をしていますが、恐ろしいことになんとこの電車、
光速の約 0.6 倍、秒速 18 万kmという速さで走ることが出来る と仮定します。

 はっは、冗談じゃないよね。新幹線が時速 300 kmで走っている時でさえ、秒速 83 m なんですから。偉そうに 「ひかり号」 なんて言っているけど、本物の光の速さの 0.00000028 倍にしかなりません。

 人間がこれまでに造った宇宙船で言えば、1980 年代に土星や木星を観測して、ついこないだ太陽系の最も外側にあるオールトの雲を抜けたボイジャー号がですね、今はロス248 と言う恒星に向けて 59770 km/hで星間航行中なんですが、秒速に直すと 1.7×104 m/sですから、これでも光速に比べると 0.000055 光速でしかありません。

 人類が経験した最高の速さとなると、太陽観測衛星のヘリオスってのが、瞬間的にだけど 239987 km/hというとてつもない速さに達したことがありました。でもこれだってまだまだ 0.00022 光速なんです。

 ですから光速の 0.6 倍なんて速さは、言っちゃあ何ですが、ちょっと想像が付かないくらいの超超めちゃ超むっちゃ高速なんですよ。しかしまあ例えばの仮定の話ですから、こんなことも許されるんですよっと。

 さてこの電車の床には光源があり、天井の鏡に向かって光を発することが出来ます。
 しかもこの電車、
天井の高さが 15 万km もあり (わはは、なんちゅう非現実的な)、光は鏡に達するまで 0.5 秒かかるという設定です。
 でもまあこれも許されると。はい、押さえて、押さえて。

 まずは、電車の中にいる人からこの 点を出発した光を見ると、当然ながら天井の 点で鏡に垂直に反射して、きっちり秒後には再び床の 点に戻るのが観測されるでしょう。

 同じ現象を、線路脇の地面に立っていた人はどのように観測したのか。
 列車は右向きに運動していますから、
点を出た光は上図のように斜め方向に進み、 点で反射をします。床に戻ってきたときには 点に達しているのが見える筈ですね。むっちゃ速い電車ですから。

 当然ながら -- の距離は -- よりも長い んです。ま、普通に考えれば、ああそうか、列車の中で見るより外で見る方が、光の速さが速くなるのであろうと解釈できます。

 だってそうでしょう。走る車の上からボールを放ったときと同じですよね。
 もし
10 m/sで走る車の進行方向に m/sで投げられたボールは、地上の人から見れば当然 15 m/s の速さに見えるんですからね。速度の合成です。当たり前です。

 逆に言えば、車の上の人から見ると、その運動方向に投げられたボールは、地上で見るより遅く見える筈なんです。

 

 そこで、じゃあ光はどのくらい遅くなるのか、それを実験で確かめようとした人達がいます。
 アメリカの物理学者
アルバート・マイケルソン(18521931Albert Michelson と エドワード・モーリー(18381923Edward Morley の二人です。

 当時、宇宙空間に充満していると考えられていたエーテルという媒質の存在を確かめるために、精密な干渉計を作って 1881 年から実験を始めたんです。

 光源から出た光をハーフミラー(半透明鏡)で方向に分け、下図の S−M−A−M−T と進んだ光と、S−M−B−M−T と進んだ光とで干渉縞を作ります。

 地球は太陽のまわりを 4744 m/s で公転し、さらに 463 m/s の速さで自転しています。地球の進行方向と同じ向きに進む光は、地球の速度の分だけ遅くなるはずです。

 マイケルソンとモーリーは、赤道上で装置全体を水銀のプールに浮かべ、干渉計を慎重に 90 度回転しながら何度も干渉縞のずれを見つけようとしました。

 赤道方向に進む光と、南北の極方向に進む光とでは速さが違うから、干渉縞の模様が変わるはずなんです。
 水銀のプールを使ったのは、装置の回転によって生じる誤差を少しでも防ぐためです。

 この実験での実験誤差は小数以下 10 桁よりも小さいので、速度が数 cm/s 違ったとしても発見できると見積もられていました。
 しかし干渉縞のずれは
年のどの季節に観測しても検出されなかったのです。
 
年間にわたって実験を重ねた結果、マイケルソンは 「エーテルの検出には失敗した。」 と発表しました。たぶん落胆したことでしょうね。

 

 アインシュタインは、どうもこの結果を直接には知らなかったようです。しかし独自の思考実験の末、単独で光速度一定の発想に辿り着きました。
 つまり 「光はどの方向に伝わるときも同じ速度である。」 としか考えられないと主張したのです。

 マイケルソン・モーリーの実験は実は失敗などではなく、図らずも宇宙物理学に革命をもたらす真実を、はっきりと示していたということになります。落胆する必要はなかったんです。

 すごいでしょう。他の様々な現象と違って、「光だけには速度の合成則が成り立たない」 のです。このことは間違いのない事実です。
 車から照らしても、ロケットから進行方向に照らしても、後ろ向きに照らそうとも、
光の速さはいつでも何処でも何処から見ても 3.0×108 m/s だ とアインシュタインは言ったわけです。恐ろしいこっちゃ。

 今でこそ小学生でも知っている 「光速度不変の原理」 ですが、当時こんな大それた事を、他の高名な大御所達は、物理学者のメンツにかけても口に出来なかったでしょう。若いアインシュタインだったからこそという気もしますね。

 1905 年に彼は博士号を取得するために最初の論文 「特殊相対性理論 Zur Elektrodynamik bewegter korper」 をチューリッヒ連邦工科大学に提出しますが、大学の物理学部長 ハインリッヒ=ウェーバー は、ただの若造の戯れ言として、見向きもしなかったそうです。

 

 さあ、そこでもう一度さっきの図を見てみましょう。
 もし
光の速さが電車の中でも外でも同じ なら、距離は違うのにどちらも秒というのは矛盾ですよね。
 床の光源を出てから反射して戻るまで、同じ光を見ているのに、同じ速さで違う距離を走っている? え、どういうこっちゃ。

 この矛盾を解消するには、結論はひとつしかありません。
 そうです。 「
電車の中の秒と、外での秒は違う。
 確かにこれだけしかないでしょう。つまり
場所によって時計の進み方は違う というのです。

 ということで、普通の解説書だったらここで、「はい分かりましたね、だから電車の中の時計は遅れるんですよ。」 って言って、「じゃあ次の問題に移りましょうか。」 となります。
 おいおい待ってくださいよ、ここまでかい。一番肝心なところなのに。

 えーっと、どっちが遅れるんだ。電車の方が時間は短いんじゃないのか。それとも電車の外にいる人には、テープの早送りみたいに感じられるって事か。

 そんなことには大抵答えてありません。あとは読者が自分で考えなさいとでもいうのでしょうかね。
 あと一言、何か付け加えて書いてくれていれば、便秘が解消した時みたいにすっきり理解できるというのに。そう思いませんか。

 だから、ちょっとしつこくなるかも知れませんが、私はもうちょい説明を続けさせてもらいたいと思いますよ。済みませんね。

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