.宇宙の果てはこうなっている. | .第Z章 そうだったのか宇宙. |
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さあていよいよ最終章です。これまでこのホームページで考えてきたことを総ざらえにしながら、ついに宇宙の果ての本当の姿に迫って行きます。
ここまで読んで来られたあなたは、おぼろげながら宇宙時空の全体像について、何となく把握しかかっておられるのではないかと思います。最後にその明確な最終イメージを頭の中に確立することにいたしましょう。
1492
年コロンブスが大西洋の彼方に新大陸を発見。1522 年にはマゼランの部下エルカノがついに人類初の世界周航を達成しました。
この時代になり、とうとう 世界は2次元ではなく3次元の球体である事が確定 したわけです。「この世の果て」
を求めて一直線に歩き出した旅人は、膨大な時間を費やしていつか必ず元の位置に戻って来ることが、これではっきりと証明されました。
地球は丸いから、旅はいつまで経っても終わりません。結局 この世界に「果て」はなかった ことになります。しかしだからと言って「無限」ではありません ね。地球という世界は、球体としての 「限り」 はありました。
狭い範囲で見る限りでは、確かにこの地面は平らに見えます。せいぜい馬や駱駝で移動している分には、地表面の曲がりには気が付かないでしょう。
だけど この大地は平面ではなく、ゆるやかに曲がっていた のです。ただその曲がり具合のスケールがあまりに大きかったために、日常の生活ではなかなか気が付かなかったというだけなのです。
ああ、やはりそうだったのか。この世界は平面ではなかったのだ。こうして人類の世界観は2次元から3次元へと飛躍したのです。
これと全く同じ事が、現代人の宇宙観にも要求されているんですよね、ねえアインシュタインさん。
あれ、どこですか。おや、いなくなっちゃったよ。
おかしいですね。もう霊界に戻られたのかな。そんなまさかね、挨拶もしないで黙って消えるなんて。
おまけにすっかり日が暮れたせいか、気温も下がって来たみたいですよ。何だか首筋のあたりがちょいと寒くなってきました。
「ばあぁっ。」 ぎゃぁ、何ですか。ビックリした。もう。 当たり前ですよ。何やっていたんですか。 背中にですか。変な悪戯はやめてくださいよ。全然気付きませんでした。 「何も感じんかったか。首筋にちろちろと息を吹きかけていたんやが。」 わあもう気持ち悪い。そう言えば何となくゾクゾクしてたんですよ。このうなじの右側あたりが。 「これな、今霊界で流行っている背後霊ごっこなんや。おもしろいやろ。」 「他にも流行っているのんがあるで。うらないごっこ。」 |
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この世界が2次元平面なら、どこかに 「世界の果て」 が必要になる。 | |
現実の世界は3次元で、一直線に旅行をしても、「果て」 はない。 |
「そう、未来に起きる筈のことをな、ぎょうさん書いて本にするんや。それをこそっと本屋に並べる。」
この現実界に降りて来てですか。わざわざ。
「そや、店員のふりしてその本の横に立っとくねん。で、お客さんがその本を欲しい言うて来ますやろ、そしたらあかんべして、『売らない』
って断るねん。えへ、『うらない』 ごっこ。」
「……。」
「すまんすまん、わてが悪うございました。どうぞお話を続けて下さいませ。宇宙で一直線の旅をしたらという話をしてたんやろ。」
もう、何んの話をしてたのか忘れちゃいましたよ。ああ、まだ首の根元はムズムズしてるし。
「いやいや、カルデア人やインド人の宇宙図を笑ってばかりはいられないというこっちゃろ。現代の我々も同んなじような勘違いをしていたわけやから。」
そうですね。もし銀河系を飛び出して宇宙空間を一直線に進む旅に出たとしら、私たちはどんどん地球から遠ざかって行くばかりだと思っていました。 「空間というものは3つの座標軸が無限に真っ直ぐ伸びていると考えておった。」 ですから遙か彼方まで進むと、一体どこに果てがあるのか。この宇宙にはどこかに果てがないと困るわけです。 「そしてもし宇宙の果てというもんがあったら、じゃあその果ての先にはもう空間はないんか、なんてことを議論してたんやから、昔の人と変わりゃせんて。」 しかしそれは、この宇宙を3次元で考えているからなんですね。実は 宇宙を時空としてとらえると、この空間はゆるやかに曲がっているのです。 |
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我々は、3次元空間を一直線に進むと、出発点からどんどん遠ざかると思っている。 | |
数億光年のスケールで宇宙旅行をすると、4次元時空がゆるやかに曲がっていることに気付く。 |
「そやな。せいぜい数万光年程度の規模で宇宙世界を見ておっても、空間いうもんは3次元で、一直線に飛んでいくとそりゃあ何処までも出発点から遠ざかるとしか感じんやろ。」
しかし数億光年単位で空間を調べてみると、実はこの空間はゆるやかに曲がっていたのです。
ああ、そうだったのか。この宇宙は3次元空間で考えてはいけなかったのか。20 世紀後半になってようやく、人間の宇宙観は3次元から4次元へと飛躍したのです。
しかし実は古代人の中にも、気付いていた人が結構いたと思われます。もし「世界」が本当に平坦だったら、水平線(地平線)というものはあり得ないはずなのだ ということに。この地面が無限の平面だったら、理論上、無限の彼方まで、どこまでも観測できるだろうからです。
「海面がゆるやかに曲がっているからこそ、ある距離より遠くは観測できない、すなわち 『水平線』 ちゅう限界があるわけやな。それと同じことやった。空間がゆるやかに曲がっておるから、観測可能な限界、『宇宙の地平線』が存在する んや。それが 137 億光年の限界なんや。」
ただしこの空間の曲がりは、「第6章」 で話題にした、太陽などの重力の周りで空間が歪む、あの曲がりとはニュアンスがちょっと違いますね。
「そやな。一番はスケールの差やな。そらぁわてらが暮らしているこの大地かて、局所的には山あり谷ありで凸凹しておるわな。」
しかしもっと大きなスケールで見ると、全体として地球表面に沿ってゆるやかに曲がっていましたよね。
「それと同じでな、確かに恒星や銀河の周りでも空間は凸凹としておるのやが、もっと大きなスケールで見るとそれらも含めて、ゆっくりと曲がっておるということなんや。」
言わば 宇宙の大曲率 ですね。
「宇宙全体には膨大な数の銀河があるんやろな。それに恒星だけやない。光を発せんさかいわてらには見ることも出来へん、例えば惑星や宇宙塵のような隠れた質量もたくさんあるで。そないな宇宙全体の質量による歪みとでも言えば良えんとちゃうやろか。」
あぁそういうことですか。あなたが言うように質量はそのまわりの時空を歪める。としたら、宇宙全体の質量ですね。見える宇宙も見えない宇宙も何もかも含めて、その 全宇宙の質量によってこのゆるやかな歪みが作られている んですか。
「まあ、言い方変えれば 質量が時空を作る。と言うかそもそも宇宙というもんは、出来た当初からそのような彎曲時空として存在していたちゅうことやな。」
ですから一直線に飛んでいる筈の宇宙船も、この空間の歪みに沿って、気が付かないままゆっくりと曲がって進んで行くことになるんですね。ちょうど大航海をしている船が、まさか海面に沿って曲がって進んでいるとは思いもしなかったように。
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