宇宙の果てはこうなっている

第Z章 そうだったのか宇宙

       
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【 第Z章 −4】 空想の世界へ 

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 待って下さいよ。でも見ることは出来るんですよね。ほらさっきおっしゃったじゃないですか。アンドロメダまで行けば私達の銀河からは見えてなかった宇宙が見えるんですよって。

 「はい、言いましたで。アンドロメダからは見えると。そやけど わてらがアンドロメダへ行ってもそれが見えるとは言うてまへん で。」

 え、どういうことですか。私達には見えないんですか。
 「計算してみなはれ。たとえ光速の
0.9 倍の速度で宇宙旅行をしたとしますわな。」
 ひゃぁ、すごい速度だ。
 「それでも
230 万光年先のアンドロメダに着くのは、地球時間で 256 万年後でおます。」

 ええ、そりゃあ確かにたかだか 100 年くらいの寿命しか持たない人間にとっては、気が遠くなるような年月ですよ、256 万年なんて。

 でもですね、地球と同じくらいの大きさで全人類が住める宇宙船を作って、何世代にもわたって航行すれば可能じゃないでしょうか。宇宙船の中央には核融合炉を利用した人工太陽を設置して、周囲には森や湖も作っておくんですよ。地球と全く同じような環境の惑星型宇宙船ですね。

 

 「そうすりゃ何時かは辿り着くやろうな。そやけどその間に宇宙の地平線も 256 万光年分後退しているんでっせ。」
 ええそうですよ。光の速さなんだから追いつけない。だから地平線のむこうは見えていないと言いたいんでしょう。でもえーと、ちょっと待って下さいよ。そのロケットの中では時間がゆっくり進むんだから。

 「はい、確かにロケットの中の人はそれをおよそ 111 万年としか感じまへん。時間は 0.436 倍に縮みますさかいな。」
 ほーら、地平線は
137 億光年プラス 111 万光年までしか拡がっていないんでしょう。なのにロケットは 230 万光年移動したんだから、出発前には見えなかった場所が見えているはずですよ。

 「あはは、そない勝手な計算せんといてや。だいいち 時間が 0.436 倍になると同時に距離も 0.436 倍に縮みます よって、ロケットから見ていたアンドロメダまでの距離は 100.3 万光年やし、地平線までの距離かて、実は 59.7 億光年先だったんです。それがプラス 111 万光年拡がる間に 100.3 万光年を移動しただけでおます。」

 あいたあ、確かにそれじゃあ見えませんね、地平線の先の新しい宇宙は。

 

 あれ、ちょっと待って下さい。もしそうだとすると、宇宙の年齢は 59.7 億才ってことになりませんか。

 「そうでっせ。ロケットの中の時計では宇宙の年齢は 59.7 億才なんです。何度も言っているやおまへんか。そもそも時間の基準が違うんでおます。偶然わてらは地球上の時計で測っているから、宇宙の年齢は 137 億才だとみんなで口を揃えて言っているだけでんがな。」

 ふー。そっかぁ。やっぱり見えないし行けないんだ。地平線の向こうには。

 「夢を壊すようで申し訳おまへんけどな。そういうことやがな。どないな計算をしても、宇宙の地平線を出ることはでけしません。まあそのことが、この地平線の内側が宇宙の全てだと科学者達も思いこんでしまった一因でもあるんやがな。」

 見ることも行くことも出来ないんじゃあ、立証出来ないじゃないですか。宇宙が地平線の向こうにも続いていることが。
 「そうやな。そこだけは地球の水平線とはえらい違いでんな。」
 うーん、まいったなあ。それにしてもこんな時だけは計算がバッチリ合っているんだから。ぶつぶつ。

 「なにふてくされた顔でぶつぶつぼやいてまんねん。」
 いえね、計算が不得意だとおっしゃった割りには、なかなか説得力のある手際良い反論でしたね。希望をうち砕くには充分でしたよ。
 「何んやて。近頃耳が遠おなってなぁ。」

 

 それにしてもですよ、現代の科学は進歩しているんだから、何とかならないんですかね。

 「宇宙の地平線の先のことについては正直言うてまだ良くわかっておらんのじゃ。けどあんさん言う通り、宇宙論に関する科学はここんところ加速度的に発展しておるから、ひょっとすると。」
 あと
20 年もしないうちに地平線の向こうについて何らかの手掛かりがつかめるかも知れませんよね。

 「20 年なあ。まあこれまでとは違った観点からこの時空を理解するような方法が、新たに見つかればの話やけどな。」
 だってですよ、ハッブル望遠鏡やニュートリノ検出などのおかげで、ここ
20 年での人類の宇宙観測技術の向上は、過去 100 年のそれを凌ぐペースだと言われているんですよ。
 だったらこのあとの
20 年ではもっとすごい革命的な進展が起きると期待しちゃうじゃありませんか。

 「わっはっは。実証科学と空想とをごっちゃ混ぜにしたらあきまへんがな。」
 そうですよね。私も思わず妄想科学の世界に迷い込みそうになりました。

 

 わかりました。諦めましたよ。どうも 私達人類の科学力では、そもそもこの地平線を越えることはおろか、137 億光年より先を見ることすら出来ない でしょう。
 「と言うより、隣の星へ行くのでさえ人類の作った宇宙航行機では数千万年を要する。」

 ですよね。
 「たかだか半径
万光年のこの銀河系の果てにやな、無人探査機を送り込むちゅうことすらなかなか厳しいで。さあてあと何百万年かかることやら。」

 まあそこんところを曲げてですね、アインシュタイン博士、よっ最高の天才科学者大博士。
 仮定の話で結構ですから、仮に今、私が瞬時に宇宙の地平線まで都合良く移動することが出来たとしますよ。
 で、そこで目にすることの出来る風景を、ひとつ絵に描いてくれませんかね。

 「絵になぁ、でけへん。」
 え、出来ないんですか。

 「そやろ 『絵にも描けない美しさ』 って言うやおまへんか。宇宙はどっから見ても美しい。そやさかい絵には描けまへん。」

 ん、もーう。そんな冷たいことをおっしゃらずに。

 「と言うのはマイケル冗談やけど、別に絵を描くほどのことやおまへん。その場所から見たかて、何も変わることはないちゅうことや。立派に銀河や銀河団が成長した、わてらと同じように成熟した宇宙の場所です。」

 そりゃそうですね。そこは宇宙の始まりなんぞではありませんから。
 「そこにもやはり 『今』 があり、おそらくその先にはさらに
137 億光年向こうに 『宇宙の地平線』 が見えとるんや。まあ、図に書くとこんなところかいな。」

 えーと 地点が私達の銀河系ですね。そこから見ると 110 億光年離れたクエーサー H1413+117 は、時間軸のこんなに下の方をから出た光だったんですか。
 「そや。宇宙の年齢がまだわずか
27 億才くらいだった頃の、銀河が出来る前の姿やったでっしゃろ。」

 それが 地点から見るとこんなに近くの時空に見える。
 「わずか
27 億光年の至近距離に見えるんやろなぁ。その姿はすでに宇宙が出来て 110 億年経った、立派な銀河群に成長しておるものと思われるで。」

 じゃあそこからアンドロメダ星雲を眺めると。
 「いやいや、アンドロメダ星雲も我々の銀河系もまだ生まれてはおらへん。その方向を眺めたかて、宇宙誕生直後の熱のゆらぎが見えるだけじゃろうて。おそらく。」
 つまり我々の銀河系の方向には、宇宙の始まりが見えているんですね。

 

 ああ、でもそれでも一度は行ってみたいですよね、地平線の向こうに。
 「まあそこまで言うんやったら、これは単なる仮説の話なんやけど、実は地平線の向こうに出る方法についてはな、科学者の間に様々な説はあることはあるで、今でも。」

 うおっ、見るだけじゃなくて 地平線を越えて向こうに出る方法 がですか。

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