.宇宙の果てはこうなっている. | .第Z章 そうだったのか宇宙. |
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さ、さ、出来ましたよ。野草入りの草団子。これを食べて、ねえ早く教えてくださいよ。宇宙の地平線を越える方法を。
「どれどれ、あらら何んやら不揃いでんなあ。大きいのやら小さいのがいろいろとありまっせ。」
すみませんね。なんせ専門家じゃありませんから。見よう見まねで丸めただけですよ。大きさは揃っていないかも知れません。 「じゃ、わては遠慮してこの一番大きなやつを。」 「おお、まいう〜。あんさんなかなか旨いやおまへんか。これは見直しましたで。生地もしっとりとしてるし、なによりこの緑の香りが何とも爽やかで。」 |
シンプルな素人料理ですけど、どうです、これこそ新鮮な自然の香り満載でしょう。
「こらあ気に入りましたで。ほなら、ちょっと説明しよか。ただしな、これはあくまでも数理上の仮説にしか過ぎんことやさかいな、そのつもりで聞いて欲しいねん。」
はい。当然理論上だけの話ですよね。だって観測すら不可能な場所のことですから。
「最初は3次元の地球で説明しよか。たとえば日本の東京からアメリカ西海岸サンフランシスコへ行くとするやんか。どないに最短距離を取ったとしても太平洋を横断しておよそ
8270 Kmですわな。」
地球の話ですか。ええ、太平洋横断サンフランシスコまで。そうですね、大圏航路を船で行ったらそんなもんでしょうかね。
「これをもっと短い距離で到達する方法、あんさん分かりますか。」
最短距離よりも短い距離で。えーっと、飛行機で行ったとしても距離は却って伸びますよね。一旦上空に上がるんだから。
「はいな。時間的には早く着くやろうけど、距離は短こうはなりません。」
あ、分かりましたよ。地底です。東京からアメリカまでトンネルを真っ直ぐに掘る、なんてね。駄目ですよね、そんなの。
「当たりぃ。」 え、良いんですか、それで。 「実は当たりでんねん。地球表面は曲がった2次元の平面でっしゃろ。それを3次元的に突っ切ることで、水平線の向こうの世界を見ることが出来るやんか。」 |
これはですね、何かの本で読んだことがあるんですよ。えーっと確か未来の夢の弾丸列車とかいうタイトルでしたかね。このトンネルに入ると中間点までは重力が掛かるから、とてつもない速度で走ることが出来るだろうって。
「中間点では相当な速さに達しておるさかい、そこから出口までも、摩擦を極力小さくしておけばほとんど燃料を消費しないであっという間に目的地へ到達できるやろな。」
地球表面上で遠くへ行くには、つい上方へ飛び上がるという発想をしがちですが、『落ちる』
という逆転の発想によって実は遠くへ早く到達出来るというわけですね。 「それと同じでな、4次元時空をショートカットして地平線の向こうの宇宙へ、あっという間に行けるんちゃうかと考えてる科学者がおりまっせ。」 時空を突っ切って行く近道 があるんですか。 「それがワームホールだと言うんやな。」 |
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Kip Stephen Thorne |
「事象の地平面が存在しないブラックホールがワームホールでつながれ、それが負のエネルギーで支えられているときには通り抜け可能だと言うんじゃが、まあ、あくまでも数学的なモデルに過ぎない。」
そうですよね。ブラックホールが存在しているという間接的証拠はいくつも発見されていますが、そこからワームホールが伸びているかどうかは、現実的にはまだ何も立証はされていないんでしょう。
それにワームホールのちょうど中間点では空間の彎曲が無限大になるって書いてありましたから。だったら 人間の身体なんて分子レベルにまでバラバラに引き裂かれます よね。
「せやのに、地平線の向こうにあるブラックホールとこちらの宇宙のブラックホールを繋げば、数万年で地平線を越えられる可能性があることを、真面目に計算で明らかにしようとしてまんのや。」 うーん、そこまでいくと眉唾物と取られても仕方ないのかも知れませんね、どうも。 |
「しかもやで。図で分かるとおりこのワームホールを移動するちゅうことは、一時的にでも時間軸を逆行してることになるわな。つまりこの旅行者は過去へ遡って時空を突っ切ることになると言うんや。」
うわあ。そもそも
『全ての事象は時間軸に沿って未来へ移動する』
という固定概念に逆らった、これも逆転の発想なんですね。 「そやさかい、イギリスの理論物理学者 ホーキング(Stephen Hawking 1942〜) 君などは 『時間順序保護仮説』 を提唱し、物理法則はこのようなワームホールの存在を禁止していると反対しておる。」 将来そのどちらが正しかったのかが検証されるような日が、本当に来るのですかね。 「もうその辺になるとあれやで。亀の上に4頭の象がおってな、それが地面を支えてるんじゃなどと言うてた古代人の夢想話と大差あらへん。」 単なる憶測推測の域を出ないということですね。 |
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Stephen Hawking |
「まあ見てみなはれ。光瞬く星空の世界ちゅうもんは、こうして眺めておるだけでも何や知らん好奇心をくすぐられるしなあ、ワクワクしまっしゃろ。まだまだ宇宙には謎が一杯やで。」
いつかは今の時代では考えも及ばなかったような、突拍子もない素顔を見せてくれるのかも知れませんね。
「あるいはどう計算しても地平線の外には出られへんと悩んでおったような事も、あと数百年もすれば、笑い話になるのかも知れん。まるで昔の人が 『地球が丸いんだったら反対側の人は空に向かって落ちるやないか。』 言うて心配していた事と同んなじように。」
ねえアインシュタインさん、私は信じますよ。何時の日か人類は宇宙の地平線に到達する技術を必ず手に入れると。
そして地平線へ着いたらさらにその先の地平線に向かって一直線に旅を繰り返し、気の遠くなるような時間を航行して再び我々の銀河系の場所に戻って来るんですね。
「16 世紀の大航海時代と同じやな。宇宙船は真っ直ぐに飛んだつもりやろうけど、空間そのものの曲率に沿っていつかは宇宙を一周し、元の場所に帰って来るやろ。」
その時になってやっと答が出るんですね。この宇宙には確かに果てはなかった。しかし一周できるということはあるひとつのまとまりを持っている と。無限ではなかったということが。
「さいです。やっぱり果てはあらしませんが、その1周がわてらが棲んどる宇宙のまとまりちゅうことになります。んでもって宇宙は有限です。」
水平線までの移動を 6500 回繰り返せば地球を1周出来たように、宇宙の地平線を何回横断すれば元の場所に戻れるのかがわかりさえすれば、この宇宙全体の大きさも見当が付くというものですがねぇ。
はは、いかにアインシュタインさんといえども、その回数を答えるなんて、それはいくら何でも無理だということかぁ。
「4600 万回でっせ。」
え、今何とおっしゃいました。
「だから言うたやろ、4600 万回やて。それだけ繰り返せば元の位置に戻る。」
え、本当ですか。わたしはあなたのことだから、てっきりまたお茶を濁すのかと思っていましたよ。
「お、良えなあ。この草団子には日本の緑茶がぴったり合うで、たぶん。現在の宇宙の大曲率の観測結果が正しければそうなる。」
うおーっ。やったぁ、それが宇宙の大きさですか。4600 万回で元の位置に戻れるような、そんな規模のイメージだと考えて良いのですね。分かりましたよ。さっそく淹れますから、とびっきり極旨のお茶を。
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