宇宙の果てはこうなっている

第T章 常識のウソに惑わされるな

       
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【 第T章 −2】 宇宙空間って

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 でね、その宇宙の果ての話に入る前に、どうしても聞いて欲しいことがあるんですよ。それはですね、ま大袈裟に言えば、我々の常識が毒されている って言うか、子供の頃から間違ったイメージを植え付けられているんですね。例えば太陽系空間のとらえ方ひとつを見ても。

 よく図鑑やなんかで、うん、教科書でもそうだけど、こんな図が書いてあるでしょ。太陽のまわりを水星、金星、地球の順番で廻っている絵がね。そうして一番外側には冥王星がいるんです。

 これ見て、そっかぁ金星は地球のすぐ内側にあるんだなんて、なにやら少し賢くなったつもりでいましたよね。そう、まるでメリーゴーランドの木馬が心棒の廻りをくるくる廻っているみたいな。

 そう、こいつです。この図がくせ者だったのである!。我々の感覚を鈍らせ、悪しきイメージを作りぃ、誤った常識を世間に流布させる元凶となったぁ、ぐふっ、ごほっ。

  まあまあ、そう興奮せずに、おじいさん。そこまで悪く言っちゃぁ可哀想ですよ。だって書けなかったんだからしょうがないでしょう。

 お、おじいさん?。じゃぁお前はおばあさんか! 何をしゃべっているんだ俺は。いや、柄にもなく勢い込んでしまって申し訳け有馬温泉。私としたことが、思わず取り乱してしまいました。 それではゆっくりとご説明いたしましょう。



 えー。たとえば 「少年科学図鑑」 みたいな本にね、巨大な太陽の横にですね、我々のこの地球がせいぜい直径
cm くらいの円で書いてあるとします。うわぁ、地球ってちいせえよなぁ、なんてね。

 実は地球は半径 6371km、直径 12742km の回転楕円体ですが、もしそれを直径cm の円で書いたとしますね。じゃあ、地球から太陽までの距離。ここがいったい何cmの間隔で書いてありますか。

 まあ、たいていの図鑑は10cm くらい離してありますよね。せいぜい大きな本でも 20cm ですか。もう 30cm を越えると、本のページからはみ出してしまいますからね。

 でも、たとえはみ出しても、やっぱり次の次の次のページくらいに、正確に書かんといけんでしょう。距離の比率通りに。それが 「少年科学図鑑」 の役目でしょうが! そう思います。だから、計算してみました。はい。



 ご存じのように、太陽のまわりを廻る惑星の軌道は、正式に言うときちっとした円ではなくて楕円ですから、地球と太陽との距離も季節によってちょっと遠くなったり近くなったりしているんですね。

 最新の天文年鑑(誠文堂新光社)によると最短軌道半径は 1.471×1011 m、最長軌道半径は 1.521×1011 m とあります。ま、ですから軌道平均距離は 1.496×1011 m として計算してみましょうか。

 出ました。地球半径をcm としたときの太陽・地球間の距離はというと 11740.692 cm です。つまりおよそ 117m なんですね!。間違わないでください。117cm ではありませんよ。



 確かに図鑑のページからは、はみ出しますね。なんせ
117m ですから。ところで、今あなたこの 「少年科学図鑑」 を自宅の階の子ども部屋で読んでいるんですか。でもね、117m ってそこの窓際のプランターの位置じゃありませんよ。もっと遠いんです。はい、わかっていますね。

 それでは図鑑を机の上に置いたまま自宅の玄関を出てください。隣の吉田さんの家まで歩いてみましょう。でもまだ 12m くらいでしょう。その隣の岸さん、隣の池田さんの家を通り越して、団地のひと区画6・7軒を突き抜けた、そう大通りの交差点の向こう。そのあたりじゃないですか。117m って。

 だって小学校のプールのたて幅でさえ 25m ですよ。あれだけ泳ぐのだってふうふうでしたよね。その倍近い長さなんです!。

 わたしは何を隠そう(べつに隠していないけど)泳ぎは得意だったんですよ。長崎県の佐世保という、海に近い街で育ちましたからね。え? まっ黒に焼けていた? そうですよ。よく知ってますね。ちび黒かずちゃんって言われてましたからね。

 あれは大学に入って最初の日でしたね。新歓コンパで、ケニアかどっかの背の高い留学生が、いきなりニコニコして話しかけてくるんですよ。たぶん自国の後輩が入って来たって喜んだんだと思いますよ。冗談はよし子さんだよ。俺はスワヒリ語は話せないって。あ、もうそんな話はどうでもいい? はい、早く本題に戻れ。すんまへん。



 でも、やっぱ小学生だったら、プール
往復(100m)でも、きついと思いますよ。それより遠いんです。その距離まで自宅から離れてみてください。そこにやっと太陽が描けるんです。地球がcmだったら。

 図鑑のページの幅が 30cm あったとしても、地球の次に太陽を描けるページは、およそ 390ページ後ろ と言うことになります。これじゃあもうそれだけで一冊の本が終わってしまいますよね。ページをめくるのも難儀なことでしょうて。これが現実。これが地球と太陽との正しい距離表示なんです。



 わかりましたか。さらにさらに、イメージしてみてください。その交差点の先から自宅までテクテクと戻ります。プールたて幅の
回分です。普通に歩いてもおよそ分近く掛かるはずです。

 恐れ入りますが、足元の地面を見つめながら、まるで落ちている 10円硬貨でも捜してる人のように、階の子ども部屋まで歩いてください。戻って来ましたか。その間、太陽から地球までは、実は なーんにもない空間 なんです。

 あるとしたら途中に直径 ミリメートルの金星と、直径 ミリメートルの水星が落ちているだけですね。ミリなんて言うと、もうこれは靴の底についた砂粒みたいなもんです。それ以外は何にもないんです。それが宇宙空間なんです。

 だから、太陽の近辺でさえこれだけ空間だらけなんですから、太陽系を出て恒星間旅行なんかしたとしたら、行けども行けども砂粒ひとつない、全くからっぽの空間が延々と続いている事になるでしょう。

 もしもですよ、地球外生命体ってのが本当にいて、彼らが宇宙船に乗って我々の太陽に近付いて来たとします。地球なんて 117m の空間に浮かぶcm の粒ですから、太陽の光を反射していなかったら、たぶん見つけられませんね。

 まあ木星ならね、木星は直径 11cm ですから、ちょっとでかいソフトボールくらいだから、これなら気付くかもね。ただし木星は太陽から 600m 離れているはずですが。
 その木星から太陽に近付く途中、
え、地球? そんなのあった? ってなもんですよ。おそらく。

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