なっくあおちさんの質問にお答えします

◎ 2007 430日(月) 153912秒に 「宇宙の果て掲示板」 に投稿された 「なっくあおち」 さんの疑問にお答えします。

> 様々なBBSで質問される宇宙の果て。私もその疑問を様々な HP に投げました。
> ここが一番わかりやすい!順序立てていて…。数式など難しそうな所は飛ばしても、
> 準光速の電車の例。エレベーターの例。時間について非常に興味深い内容でした。
 熱心に読んで頂いてありがとうございます。と言うより、よくぞこんな辺鄙な HP までお越し下さいました。おまけにお褒めの言葉、感謝感激の行ったり来たりです。
 こうしてせっせとWebページを作成している者にとって、「ここが一番わかりやすい」 なんていう言葉は、本当に跳び挙がりたいほど嬉しいものでした。
> そこで質問です。
> @. 電車の例で、電車の外側から見ている人は、光が目にはいるまでの速度や時間は計算されているのでしょうか。
 はい。第章の第節あたりの話ですね。確かにそこは大変気になるところです。

 たとえば電車の中に設置してある時計を、ホームにいる人が見て秒間の時間を測るにしても、測定開始の電車の位置と秒後の位置は違います。

 私たちはそこに物があるということを光で認識しています。

 太陽の光や電灯の光がその物体の表面に反射して、それが私たちの目に飛び込んでくるから、そこに時計があるということが分かるのです。

 測定開始時と終了時とで距離が違えば 時計の文字盤の映像が、外にいる人の瞳に届くまでの時間 も微妙に違ってきます。まして中と外とでは 「同時」 という概念そのものが共有できないと言うんですから大変です。

 そこで時間の経過を比較するための思考実験としては、厳密に言うと左図のような方法を取らざるを得ません。

 それは、線路の脇にたくさんの時計を並べておく というやり方です。これらの時計は全て、最初に時刻合わせがしてあります。

 電車の中の人は、別のストップウォッチを持ち、外の時計がゼロを指した瞬間に自分の時計をスタートさせます。そして電車で走りながら外の時計と比較するのです。これなら中と外との時間のずれを検出できます。

 ただし列車の速さは秒速 18 万kmですから、秒間の時間を測るにために、少なくとも外には18 万kmの距離にわたって、時計がズラッと並んでいなければなりません。うはは。

 実はロケットで飛び立ったお兄ちゃんと弟の時計を比較する場合も、最初に地球の時刻に合わせられた無数の時計を、ロケットが進んでいく宇宙空間に、ズラーッと並べておけば良いのです。


 ただし、そのたくさんの時計の時刻合わせをしておくというのが、これまた結構神経を使う作業になるでしょう。
 なぜなら 「見て合わせる」 と言っても、そもそも離れた時計を
「見る」という動作そのものが、映像が目に入るまでのわずかな時間誤差を含んだ作業 だからです。

 方法は、左右等距離に時計を置き、中央地点から信号を送る。それぞれの時計は信号を受けると動き出す。こうすれば二つの時計を正確に合わせられます。

 この操作を繰り返すことで、たくさんの時計を合わせることが出来ます。注意することは、時計を持ち運んではいけないという点です。もちろん、動くことによってその時計の進み方が変わってしまうからです。

 つまり、実際に電車の中と外とで時計を比較する実験をやろうとすると、現実的にはいくつもの前提条件を整えておく必要があるでしょう。
 そこを詳しく述べても、
議論の本質と無関係なところでただ混乱を増やす だけであろうと判断し、本文ではこうした点は割愛したのです。

> A. 双子の例。宇宙船が帰ってくるときは時間が短縮され、地球に戻っても歳をとっていないのではないでしょうか。
> 例えば光年先の星へ飛び立ったとき、到着した情報が地球に届くのは年後ですが、戻ってくるときは情報が早く到達するため、結果は時間の経ち方は一緒ではないかと思いますが。
> 勘違いでしょうか。グラフで説明いただければ幸です
 なかなか鋭い質問ですよね。では順を追って見て行きましょう。分かりやすいように、本文で使った設定 ( 兄は光速の 0.6 倍のロケットで、片道年、往復年の宇宙旅行をした。) を使用します。

* どちらの時計も遅れる
 まず言えることは、行きの行程、すなわち宇宙船がただ等速度で地球から遠ざかっている間は、確かに 地球から見た船内の時計は遅れて いますが、宇宙船から見ると、自分は止まっていて地球の方が遠ざかっているのだと考えても良いのですから、実は 宇宙船から見た地球の時計もまた遅れて 見えているんです。

 つまり兄から見ると逆に弟の方こそゆっくり歳をとっているようにみえるでしょう。しかしその状態で兄弟が出会うことはありませんから、浦島現象は起きません。

 第章の第節で説明した通り、時間とは相対的なもので、しかも宇宙では 「絶対静止」 という概念は通用しないのですから、宇宙船だろうと地球であろうと、どちらから見てもとにかく、相手が動いているのだから相手の時計が遅れて見える というだけのことです。

 もちろん、宇宙船が等速度で地球に近付いている間、すなわち帰りの行程でもこれは全く同じ事です。


 では、「浦島効果」 はなぜ発生するのか。
 兄弟が出会うためには、宇宙船はどこかで方向を変えてUターンをしなければなりません。確かにここがポイントにはなります。

 ところが書物によっては、方向を変えるためにはまず減速をして、その後向きを変えて増速運動をする。すなわち必ず加速度運動を伴うので、これはもう特殊相対論では説明できない。一般相対性理論の範疇に入るのだと書いてあります。

 しかも 「一般相対論となると数式が面倒になるので計算は省略します。とにかくこの加速度運動中には、宇宙船の方だけが時間が縮むのです。」 などと逃げを打って (ごまかして) うやむやにしてしまっている本すらあります。

 確かに等速運動系のみを扱った 「特殊相対性理論」 に比べ、時空の歪みから重力波にまで言及した 「一般相対性理論」 は、理解するまでに多少時間が掛かるとは言われていますがね。

 しかしこの双子の浦島効果問題に関しては、わざわざ一般相対性論を持ち出すまでもありません。なっくあおちさんのご要望通り、私は ミンコフスキー座標 でこの事を説明することにいたしましょう。

 ただし、確かに加速度運動をするのは宇宙船の方です。宇宙船から見た地球も確かにUターンしているように見えるでしょうが、実際に地球は減速や増速などの加速度運動はしていません。ですから、この現象を特殊相対論で考えるときには、あくまで地球の側を基準にとって論じます。


* 行きの行程
 右の座標は横軸は距離で、単位は 「光年」 です。縦軸は時間を表しています。まあ、次元時空 (X,Y,Z,T) のうちを省略して、次元 (X,T) で表現していると思ってください。

 座標の基準は地球に取りますよ。地球に残った弟くんは、空間的には移動していませんが、時間だけが経過するので、このグラフの縦軸に沿っての方向へ移動していることになります。

 今例えばO点にある地球から一本の光が照射されたとします。光は年後に光年の距離だけ離れた地点に到達します。
 ただしその間、時間も
年が経過していますから、光の先端は点に達している事になります。つまり 光の光跡は、このグラフの中では常に斜め45°の直線として表される ことになります。

 お兄ちゃんの宇宙船の速度は光速の 0.6 倍ですから、年後の の値は 0.6 光年です。行きの年間の航跡をグラフでは OR で表しました。

 さて、宇宙船で年が経過したとき、地球の時計では何年後になっているのか。第章第節で紹介したローレンツ変換式を用います。

 すなわち 地球時間で年後 にお兄ちゃんの宇宙船は地球から最も遠くの地点に到達する事になります。

 その距離は速さ×時間ですから 0.6 C×。つまり地球から見て光年の位置です。( 実は宇宙船から見ると 0.6 C×で、2.4光年の位置です。このように運動する物体から見た長さは、地球で見た長さより縮んで見えます。)


 さて、ちょうど西暦 2000 日に地球を出発したお兄ちゃんは、毎年お正月に、弟が住む地球に向かって、新年の挨拶をビデオレターにして送ってくれていました。

 宇宙船内で回目のお正月に発した電波は、地球時間の 2005 年に光年の彼方から送られて来ますから、それが弟くんの目に入るのは、2008 年の日です。

 ですからその間、地球では年おきに、宇宙船での新年の様子を受信していたことになります。

  「お兄ちゃんはなんてのんびり屋なんだ。年ごとにしか歳をとっていないぞ。」
 映像を見た弟くんは、きっとそう言うと思います。

 それをグラフにしたのが上の図です。わかりますね。電波の方向は常に 45°です。 宇宙船で年が経過したとき、地球ではもう年間が過ぎています。そしてその時のビデオレターは年目に届きます。

 ついでですが、このミンコフスキー座標で、横軸に平行な直線 を取ってみても、それが 「同じ時刻」 を表してはいないことに気付くでしょう。

 強いて言うなら点線 ‘ が同時刻の線だと言えないこともありませんが、そもそも宇宙では 「同時」 という概念は、もう基準としては使えないということです。

 第章第節でわたしが、

 「ただ我々から見えないというだけであって、現に 『今のアンドロメダ』 というものはあるはずだ。そこではアンドロメダ星人がやはり 『今』 を感じているはずだ。」 などというのは、「絶対時間」 「絶対空間」 に囚われた誤った発想 なのです。

 と申したのはこのことです。だって 2004 年に弟くんが 「ああ、今頃お兄ちゃんは、一番遠いところまで達しているはずだなぁ。」 と考えたとしたら、それは間違っているでしょう。

 それと同じ事です。「今」 というものはそれぞれの場所にあり、共通ではないのです。


* 帰りの行程
 話がそれましたが、では帰りの行程を考えてみましょう。
 帰りの
年間、確かに宇宙船は地球へ近づいていますが、ローレンツ式において運動の方向なんてものは関係ありません。計算式は近付こうが遠ざかろうが、全く同じです。

 速さが 0.6であれば、近付く年も遠ざかる年も、地球上ではやはり年の時間が経過しています。地球時間 2005 年に宇宙船は方向転換をしたのですから、地球に戻ってくるのは 2010 年なのです。
 ( 遠ざかるときには時間が伸びるけれども、近付くときには時間は縮むなどと、いい加減なことを書いてある解説書もありました。要注意です。)

 ただし右の図で分かると思いますが、弟くんに届く毎年の新年の挨拶電波は、なっくあおちさんがおっしゃったように、詰まって受信されます。

 2008 年から 2010 年までの年間に回の情報が届きますから、弟くんには 「おいおい、今度はお兄ちゃん、半年ごとに才ずつ歳をとっているぞ。」 と感じられるでしょう。

 結局トータルすると地球上では 10 年間に回の挨拶を受け取ったのですから、宇宙船を降りてきたお兄ちゃんの姿は、才分だけ歳をとっているのです。

 そしてお兄ちゃんは 「船内では回しか正月は来なかったんだから、まだ年しか経っていないはずだ。」 と言い張るでしょう。

 どうでしょうか。なっくあおちさん、スッキリできましたでしょうか。まだ腑に落ちないことがあれば、いつでもまたメッセージをお願いします。                 Astrohouse

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