宇宙の果てはこうなっている

第X章 空間が曲がっている証拠

       
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【 第X章 −4】 重力レンズ 

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 さあ、そんなことしていないで、話を先に進めないと。第の予言に早く行かないと。このままだったらオールナイト。もう誰も覚えちゃいないサタディナイト、フィーバー。

 「番目の予言なぁ、えーっと何だっけか。あ、確か 重力赤方偏移 やったな。」
 重力場から出た光は、時空の歪みの分だけ波長が長くなるという予言ですね。あれはあなたが亡くなって
年後の 1960 年に、RVパウンド さんと GAレブカ さんが、実験で確認しましたよ。
 しかも天体からの光ではなくて、地球上の高さ
22.5 メートルの塔の上下での重力差を利用したんです。

 「ほー、たった 20 メートルでの重力差ですかいな。それやったら赤方偏移は 10-10 もないんとちゃいますか。そんなん測定不可能やで。」
 いいえ、さすがに数字には強くないアインシュタインさん。このときの赤方偏移はですね、なんとわずかに
5.13×10-15 だったんですよ。地上からガンマ線を放射して、それを塔の上のコバルト結晶で受けたのです。

 「コバルトの結晶?ああ、ということはひょっとして。」
 はい、共鳴吸収が起こりやすい結晶のメスバウアー効果を利用したんですね。
 「うーん、やられてもうたぁ。それなら検出できるやろうて。うまいことやりましたな。」

 

 でもこの事は、そりゃあ物理学者さん達の間ではビッグニュースだったでしょうが、私たち一般人には、もうひとつピンと来ませんでしたね。
 それより何より、天文マニアの間で衝撃的だったのは、何と言ってもあの
ハッブル望遠鏡がとらえた重力レンズ の写真でしたよ。アインシュタインさんはご存じないかも知れませんが、だってあれはついこないだ、1991 年のことですからね。

 「重力レンズが発見されたことくらい知ってまんがな。霊界にもサイエンス関係のメルマガがおましてな。わても暇つぶし程度には目を通していましてん。」

 あ、ご存じでしたか。ねえ、いっそのことあれを第の予言だったことにしてしまいましょうよ、この際。だってあの四つ葉のクローバーを見せられた途端、誰だって 感激しまくり千代子 でしたからね。

 「そんなもん、どっちだって構ぃやしまへん。いずれにしろ時空の曲がりが原因の現象ですよってな。」

 よぉし、そうと決まればさっそくアインシュタインさん、重力レンズの基本的な原理について、ひとつ読者の皆さんに説明をお願いしますよ。ただし言っておきますが、からすみも佐世保バーガーも、なーんにも出ませんからね。わかってるでしょうね。

 「げぇーっ。わてが解説するんでっか。そんな寝耳にミミズやで。」
 うわーっ、耳にミミズ? 想像しただけで気持ち悪いじゃないですか。良いからさっさと始めて下さい。はい、
カメさん行きますよ、,ほいスタート。

 「あんさんいつからテレビプロデューサになってまんねん。しょうがおまへんなぁ。これは確率的には非常に低い現象かもしれんけどな、我々から見て一直線の方向に、つの銀河が偶然重なって見えていたとしたらや。」


 遠い銀河と近い銀河が、全く同じ方向に存在している場合ですね。
 「遠くにある方の銀河の光は、
手前側の銀河によって歪められた時空 の中を通過するんやさかい、ちょうど凸レンズを通るときのように曲げられるに違いない。それを我々から見ると、遠方の銀河の像がつ以上に見えたり、像がゆがんだりすることがあるやろう と予言しておいたんです。」

 そんな姿の銀河がもしも現実に観測されたとすると、これはもう立派に、質量は周囲の時空を曲げるという証拠になりますよね。

 「そやけど、そないにうまい具合に銀河が並ぶなんて、おそらく全天でもひとつかふたつあれば良い方やろと思うとったけどな。」

 なーんだ。言い出しっぺの張本人でさえ、大して期待はしていなかったということですか。
 確かに確率的には厳しい現象かも知れませんが、
1979 年に最初の例が見つかって以来、年につくらいの割合で見つかっているんですよ。

中央にある銀河団の重力によって空間が曲げられ、遠方にあるクエーサーの像がアーク(弧)状に歪められている。

 「そりゃぁすごい。そないにあったんでおますか。」
 しかし中には素人の目から見ると、ぱっと見、ただの不規則銀河じゃないかとしか思えないものもあったり、まあ言われてみればレンズの像のように円弧状に伸びているようだけどね、といった程度の写真もありました。

 でもこの G2237+0305 重カレンズ系の鮮明な画像は圧巻でしたよね。ほんとにあなたが名付けた 「四つ葉のクロ一バー」 の形になっているじゃないですか。
 中央は重カレンズ効果を起こしている銀河、この銀河の真後ろにあって、本来なら見えないはずのクエーサーが、
つの像に分かれて見えているんですね。

80億光年彼方にあるクェーサーは、手前の銀河の陰になって見えないはずだが、銀河の重力で光が曲がり、凸レンズのような作用でクェーサーの周囲に虚像を結ぶ。 講談社Quark OCT’91より イラスト:平山輝彦

 手前の銀河は億光年、その背後およそ 80 億光年の距離にクエーサーがあると思われています。この写真は 「アインシュタインの十字架」 と名付けられました。

 「自分で言うのも何やけど、重力源の銀河がややいびつで、しかもクエーサーと我々との位置関係が、直線上からわずかにずれておったがために、こないに見事な像になったんやろな。綺麗なもんやで。」
 ほんとうに。じっと眺めているだけで、時空の不思議を垣間見る思いがしますよね。

 

 しかもアインシュタインさん、この重力レンズの相次ぐ発見は、あなたの一般相対性理論の強力な後ろ盾になってくれただけでなく、実はもうひとつ 人類の宇宙観の発展にすごい貢献 をしてくれているんです。聞いて驚かないでくださいよ。

 「えーっ。」
 まだ何も言ってないじゃありませんか。先に勝手に驚くのだけはやめてください!
 「そないに勿体ぶらんと、さっさと言うたら良えやないか。」

 それはですね、宇宙のこれからの寿命を決定づける決め手にもなりそうなんですよ。
 「宇宙の寿命て言うたら、閉じているか開いているかの話しでっか。」

 ですね。私たちの宇宙の密度が立方センチあたり×10-29 グラムより大きければ、現在膨張中の宇宙も自分自身の重力のために、いつかは収縮に転ずる。やがて全ての星は圧縮され高温で蒸発し、原子は素粒子に分解されて宇宙は再び一点に収縮して消滅する。
 「ビッグバンの反対の
ビッグクランチ でんな。」

 しかしもし立方センチあたり×10-29 グラムより密度が小さければ、宇宙は永遠に膨張を続け、ついにはスカスカの状態になり、星は燃え尽きて暗黒の時空だけが残る。
 「そうや。だから現在宇宙にどれだけの物質が存在するかを調べれば、宇宙の未来がどっちになるかは決定しまんのや。」

 ところが私たちが可視光線や電波を使って見ている星や銀河などは、宇宙全体の物質のうち割にもならないだろうと言われています
 「はいな。宇宙には、どんな電磁波を使っても観測できない 『
ダークマター(暗黒物質)』 と呼ばれる物質が、ぎょうさん満ちておる筈やねん。『ミッシング・マス』 とも言われてまっせ。」


 その見えていない物質 「ダークマター」 の量がわからなければ、宇宙がどんな結末を迎えるのかは推定できませんよね。
 ところがアインシュタインさん、この重力レンズ効果における像の乱れ具合を分析することで、レンズの役割をしている銀河の総質量が計算で予測できるわけです。もちろんダークマターも含めた質量が。

 「なるほどなぁ。銀河周辺の時空の歪み具合は、その質量で決まるんやさかいなぁ。途中の銀河が重ければ重いほど、より離れた位置に像ができる、ちゅうわけでんな。」

 そうです。これまで全くお手上げだった、宇宙を満たす物質の質量分布 を探る手掛かりを、ついに人類は手に入れたことになるんです。ね、それもこれもグロスマン・アインシュタイン方程式があってこその大功績じゃありませんか。
 「はーい、何度もムチ打つようにその言葉、使わんでも良えやろ。堪忍してえな。」


 現在質量が解析されている重力レンズは十数個ですが、これが
100 個単位で分析が進めば、われわれの宇宙の将来の運命が、ジャーン! いよいよ明らかになってくると思いますよ。
 「あんさん、えらいまた、ジャーン!がお好きでんな。ひょっとして毎日麻雀やりながら芝麻醤入りのジャージャー麺でも食べてるんとちゃいますか。」

 もう、食べ物の話はやめなさいって。それにしても 100 個の重力レンズですよ。不可能じゃないでしょう。頑張って見つけましょうよ。そうすれば人類の宇宙観は、またまた大変革の時代を迎えることになるんですから。

 「さよか、楽しみやなぁ。せやったら福島県にも、大きな天文台を建てる必要がありますな。」
 え、日本の福島県にですか。どうしてです。
 「そらあ福島県と言えば、あそこは会津百個隊。」

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