| .宇宙の果てはこうなっている. | .第X章 空間が曲がっている証拠. |
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重力の本当の正体は時空の曲がりだなんて、こんなとんでもない事を最初に言いだしたんだから、そりゃあすぐに世界中の物理学者が認めるというわけにはいかなかったでしょうね。
「水星の場合、その近日点は
100 年で 5600 秒角 (1秒角は1度の 3600 分の1) 移動している事が既にわかっておった。」
つまりいつも同じ軌道上を回っているのではなく、少しずつずれながら公転しているというわけです。
これの原因は、太陽やその外側を廻る惑星達からの重力による影響なんですが、ニュートン力学を用いて金星や木星など、全部の惑星からの影響を計算して差し引いても、近日点が移動する 5600 秒角のうちの残り 43 秒角を説明できませんでした。そのため長いこと天文学上の謎とされてきたんですよね。
「一時は、水星の内側には、人類がまだ発見していない謎の惑星があるんやろうと言われたこともおました。」
ところがアインシュタインさんは、太陽のまわりの空間は太陽の重力によって歪んでいる筈だから、その空間の歪みの影響を考慮して計算すると、その謎は解決するだろうと予言されたわけですね。
「そう、そのためには時空の曲がりを計算できる数学式が必要やった。」
物体の質量がどのくらい時空を曲げるかを決める方程式が、有名な
『アインシュタイン方程式』 と呼ばれているものです。
「しかし大きい声で言わんといて欲しいんやけど、わてはそもそも、計算ちゅうのが大の苦手なんや。」
あはは。面白いですよね。それ、私も聞いたことがありますよ。物理学の大天才アインシュタインさんが、実は数学が苦手だったんですから。
「こんとき助けてくれたんは、チューリッヒ工科大学時代からの友人で、数学者の
グロスマン (1878
〜 1936 )
Marcel
Grossmann 君です。」
あ、ベルンのスイス特許局技師への就職を、お世話してくれた人ですね。
「リーマン幾何学もフーリエ級数も、みんなグロスマン君に教わったんやけど、あんなチマチマしたんはわて、もう大嫌いや。」
でもアインシュタイン方程式では、もののみごとに近日点のずれの残り
43 秒をぴったり説明出来たじゃありませんか。
この 『アインシュタイン方程式』 を使って、遠くの星からの光が太陽の近くを通るときにどれだけ曲がるかが計算できます。曲がった光を地球から見ると、太陽の近くでは星の位置が少しずれて観測される筈だ というんです。
「しかし太陽の周囲の星なんてのは、普段は見ることが出来ませんわな。なんせ真っ昼間やさかい。」
そこでアインシュタインさんは、皆既日食のときが星の光の曲がリを観測できるチャンス だと提唱されていたわけですね。
「そや。本来なら太陽の後ろに隠れているはずの星の光が、曲がった空間によって太陽の縁から見える場合があるはず。計算によるとその光が曲げられる角度は1.73秒角 (約0.0005度) だと書いておいた。」
その予言を確かめるチャンスが、1919 年に訪れました。5月 29
日の皆既日食は、ちょうど牡牛座のヒアデス星団を背景にしているので、時空の曲がりによって星の光がわずかに曲げられる様子を観測するには絶好の条件だったのです。
イギリスでは二つの観測隊がつくられ、北ブラジルのソブラルと西アフリカのプリンシペ島へ派遣されました。
「しかし日食の当日は雲が多くてな、イギリスの天文学者
アーサー・エディントン(A.Eddington)君にひきいられたグループが待機していたプリンシペ島では、皆既予定時刻の一時間前に、にわか雨まで降る始末や。」
はい、皆既日食中の数分聞( 302 秒間)に撮影された
16 枚の写真は、その大半は雲の切れ端が星にかかっていました。しかし雲が切れた一瞬に撮影された貴重な一枚があったんですね。それを分析した結果、確かに星の位置はずれていて、その角度はなんと、1.61±0.3秒。
またブラジル隊の方は、こちらは観測装置の精度にやや問題はあったんですが好天に恵まれ、出した値が
2.28〜1.31秒 でした。これらのことは、アインシュタインさんの一般相対性理論が正しいことを立派に示していたんです。じゃーん!。
と、以上は Saimon
Singh さん著、青木薫さん訳の
「ビッグバン宇宙論」 からの情報でしたぁ。
「ほんまか、そない
『ジャーン!』 てまで書いてあんのんか。」
あはは、まさか。でもエディントンさんの観測結果が公表された
11 月の王立協会と王立天文学会の合同会議で、あなたは
ニュートンと凌ぐ功績を残した とまで称えられたんですよね。
ほら、記録も残っているんです。翌日のロンドンの
「タイムズ」 紙の見出し、これご覧になったでしょう。
「科学の大革命」 「字宙の新理論がニュートン説をくつがえす」。
各国のマスコミが、いずれもセンセーショナルな見出しをつけてこの事件を報道しました。
「そやったな。観測隊のメンバーは全員スパイ容疑で逮捕されてもうた。そりゃそうやろうて。大きな望遠鏡や写真装置を担いでうろついておったんやからな。」
しかも敵国の領内をですからね。
「ドイツが宣戦布告をしたことは知らされてなかったらしいんや。捕虜生活はさぞかし大変やったろう。」
そう言えばその頃は、金星の太陽面通過を観測するための遠征中に熱病で死亡した人や、現地の軍隊に殺された人などもありましたよね。
「当時の天文観測はほんまに命懸けやった。」
そう考えると、今の私たちは、なんて幸せな時代に暮らしているんだろうと思います。
「わてらは皆、科学のためやったら命を落とすくらいの覚悟は出来ております。そやけど死ぬにも死にきれんのは、戦争に召集された科学者やったろう。ガリボリの白兵戦で命を落としたイギリスの モーズリー 殿や、東部戦線の塹壕の中でも論文を書き続けた シュヴァルツシルト さんなんかは、生きておったら、わてなんぞより数倍も立派な科学者になっていた筈や。」
いやあ、あなたって本当に良い人ですね。なんだかアインシュタインさんのことがだんだん好きになって来ましたよ。
「じゃろ、そやろ。ありがとさんなぁ。そう言われると、わてもごっつ嬉しいやんか。で、皿うどんの次は、今度は何やねん。」
あなた、食べ物のことしか頭にないんですか。
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