宇宙の果てはこうなっている

第X章 空間が曲がっている証拠

       
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【 第X章 −2】 重力の正体 

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  「もうひとつの場面でっせ。太陽からも地球からもほとんど重力を受けないような遠い宇宙空間を考えてみなはれ。そこをロケットが等速度で飛んでいるとしますわな。」

 速度一定の等速運動ですね。それならそのときロケットの中は、これはもう立派に無重力状態です。何の力も働きません。

 「そや。しかしやな、そこでエンジンを吹かして加速すると、中の人は一気に逆方向に、つまり後ろ向きに力を受けますでっしゃろ。
 はい、このように加速度運動をしている乗り物の中で加速度と反対の向きに感じる力を 「慣性力」 と言います。そして力を受けたときの、動きにくさの度合いを示すのが実は 「
慣性質量」 ですよね。まあ質量が大きい物体ほど、同じ力を受けても動きにくいという意味ですかね。

 「ところがこれは実際に力が働いているのではないとされてきた。」

 はい、そうです。これもニュートンさんは 「慣性の法則」 の中でこの事を解明しています。力が働かない限り、静止している物体は静止し続けようとする。動いている物体はそのまま等速運動を続けようとする。

 「つまりロケットの中の人は、ある瞬間の速さのまま前方へ等速運動を続けようとするのに、外側の容れ物であるロケットが加速したさかい、あたかもロケットの中では後方に力を受けたような気がする、ちゅう説明でんな。」

 そうですよ。上の図でも分かるとおり、ロケットの中の人にとっては、さっき自分は点に居たと思っていますから、まるで後方へ押しつけられたと感じてしまうわけですね。ま、一種の錯覚のようなものとでも言いましょうかね。

 「誰ぁれも人を後ろ向きに押してなんかおらへん。ただ前方へ進む速さが違っただけのこっちゃ。そやさかい 慣性力いうのは実在する力ではない と。」

 言ってみれば、容れものの方が先行してしまったために感じる、あくまでも 「見かけ上の力」 なんでしょうね。バスが急発進したときや急ブレーキを掛けたときに乗客が感じる力、ジェットコースターの中で感じる力、遊園地の珈琲カップの中で感じる遠心力なども、皆この慣性力の仲間です。

 ですから 「重力質量」 と 「慣性質量」 とは、違うものとして区別して使われてきました。

 

 「ところがこれがもし 9.8 m/s2の加速度やったら、ロケットの中の人には重力と全く同じように感じられるはずでっしゃろ。これが 『見かけの重力』 でんな。」
 はい、もちろん実際の重力とは全然関係ありませんからね。見かけの重力です。

 「そこんとこがどうも引っかかったんや。このように地球や太陽からはるか離れた宇宙空間でも、重力は生み出せるちゅうのが。」
 ああ、おっしゃっていることは何んとなくわかる気がするんですが。しかしまあ学者さんというのは、思わぬところにこだわりを持つ人達なんですね。私なんか、それは単なる見かけの力だと言われれば、あ、そうですね、で納得しちゃいますけど。

 「そこで考えたんやがな。10 年間かかって。一体重力の本当の正体とは何だったのかと。地球の表面で感じる重力も、加速度運動しているロケットの中で感じる見かけの重力も、実は同じもんと違うやろか と。」
 同じもの。
 「そや。それはそもそも空間の性質がそうなっているんやと。」

 

 そこです!。おそらくたくさんの方が相対論の解説書をお読みになって、何となく分かった気にはなっているんでしょう。でもしっかり理解しているのかと言われればめっぽう自信がないんですよね。そのあたりが。

 空間の性質がそうなっている って、そこの感じがなかなか飲み込みにくいところですからね。もう少し詳しい話を続けてくれませんか。
 「はいな。ちょっと考えてみまひょか。さっきロープを切ったエレベータがありましたな。」
 ええ、リンゴと一緒にあなたも落ちていった無重力のエレベータですね。

 「それを逆にな、上向きにロープを引っ張り上げて 9.8 m/s2の加速度で上昇さしてみなはれ。」
 今度は上向きに引き上げるんですか。そりゃあ中の人は、めっちゃ重力が大きくなったように感じますよ。本来の重力に加えて慣性力が加わりますから、見かけの重力がちょうど
倍になったように押し潰されちゃうでしょうね。

 「でっしゃろ。そしたらおかしいですわな。合計で19.6 m/s2 の加速度になるんやけど、そのうちの半分は 『重力質量』 にかかり、残り半分は 『慣性質量』 に掛かっているとでも言うんでっか。」
 えーっと、それは。
 「ねえって、おかしいやおまへんか。ぜーんぶ中にいる人の 『質量』 に掛かるから、重力が
倍になるのと違いまっか。なあ、そうやろって、ほれ、おかしいと思わんか。」

 しっつこい人やなぁ。はいはい、そう言われればそうです。
 「つまり同じもんなんや。『重力質量』 も 『慣性質量』 も。絶対に同じ原因で生じている筈なんやて。」
 うーっむ。
同じ原因で生じている んですか。

 

 「さいな。そこでもういっぺん、ロープを切ったエレベータに乗りますわな。」
 えーと、忙しいですね。今度はまたロープを切って落とすんですね。
 「ぐちゃぐちゃ言わんと、さっさと切ったらよろしいがな。そのエレベータの左右の壁の、同じ位置に小さな穴を開けておきまっせ。」

 落下して無重力状態になっているエレベータの壁に、穴があいているんですね。
 「そんでもって下降中のある瞬間に、右の壁の穴から光が水平に飛び込んできたとしますやんか。」

 光が真横に水平にですね。すると穴は同じ高さなんだから、左の穴から出ていきますよね。
 「そう。エレベータの中におる人から見れば、光は直進して左の壁の穴から出て行きよりまんねん。」
 わかってきました。ところがそれをエレベータの外にいる人が見ると。

 「そう、光が右の穴から入って左の穴を出ていくほんの短い時間の間にも、エレベータは落下しよりますさかい、光が出ていく瞬間には、左の穴の位置は少しだけさっきより低くなっておるはずや。」

 おやおや、そうすると光は出て行けない。

 「そんなあほな。ある人には出て行く姿を見せておいて、別の人には出て行かないなんて、光さんはそんなに二重人格やおまへん。あの方は実直なお人ですやさかい、やっぱり左の穴から出ていきます。」

 と言うことは、光はエレベータの中でまるで下向きに曲げられたように進むということですね。

 「はいな、誰も実験したことのないことやけど、必ずそうなります。」
 え、じゃあ光は地球の重力で曲げられたんですか。

 「うーん、ちょっと違いますなぁ。だってこの事は、宇宙空間を加速度運動するロケットの中でも起きることですよってに、つまりは 加速度運動する空間の中では、必ず光は曲げられる ちゅう事を意味します。

 はあ、そうか。宇宙空間を加速度運動するロケットの右側と左側とに穴を開けて同じ実験をしたとしても、やはり光は曲がって進むと言うんですね。
 加速度運動をしている物体の中では、真っ直ぐに進むはずの光が曲がってしまうのか。宇宙空間だろうと地球表面だろうと。

 「そこで考えたんでおます。これは光が曲がったんではない。とりもなおさず、そもそも空間自体が曲がっていたからやと。」
 本当にすごいことですよ。もしも私たちがあなたと同じ時代に生きていたとしても、そこまで大胆な発想にはとてもとてもたどり着けなかったでしょうからね。

 

 「おっほん。そこでその空間の曲がり具合をもうちょっと詳しく知りたくてな、今度はリンゴを個両手に持ってエレベータを落として見たんや。」

 その中で両手のリンゴを手放すと、人もリンゴも全部宙に浮いて重力は消えたように見えます。

 「さいな。そこで我慢して、長時間落ち続けてみなはれ。個のリンゴは地球の中心に向かって落ちて行くんやさかい、厳密に言うたら並行に落ちていくわけやないでっしゃろ。」

 あ、全ては地球中心に向かって落ちるのですから、エレベータの中で見ているとそうですね、二つのリンゴはほんの僅かずつですが、だんだん近付いて来るように見えるでしょう。

 「そこでやが、この、人もリンゴも光でさえも曲げてしまう空間の性質ちゅうのんを図に描くなら、上のようになるんやないかいなと。」

 はあ、つまり空間そのものがこのように曲がっているから重力が働くのだと。その 空間の曲がりに沿って全ての物質は落ちていく というわけですね。

 「加速度運動するロケットの中の空間も、おそらく右の図のように曲がっておるんじゃろう。」
 すっばらしい発想力ですよ。恐ろしいくらいです。重力質量も慣性質量も結果的には同じもので、物体に働く力は、実はその土台となる空間の歪みに沿って生じていると考えたのですね。

 「この歪みによって時計の遅れも生じているはずだから、言うなら 時空が曲がっておる んやな。本当は次元的な歪みを次元的に図示したわけやから、すまんが図は正確とは言えんかも知れんで。」

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