宇宙の果てはこうなっている

第U章 膨張宇宙って本当なのか

       
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【 第U章 −5】 星団視差法 

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というところで、次に移っても宜しいでしょうか。
 「何故いちいち人の目を気にする。勝手に進めれば良かろう。どうせわしはここでウトウトしておれと言いたいわけじゃな。」

 ん、もう。そんなに拗ねないでよハブちゃん。私が悪うござんした。
 「ハ、ハブちゃん、馴れ馴れしい。ここはメイド喫茶か。」

 じゃあ先に進みますよ。もうひとつ、同じ分光視差でも、散開星団のスペクトルから 星団全体の距離を割り出す手法 があって、これは単独の星の場合よりもずっと信頼牲が大きくなりまぁす。

【ヒアデス星団 Mel.25】 Hyades Clustar

 おうし座に 「ヒアデス星団」 というのがあります。等星アルデバランからV字状に星が散らばり、この星団全体で雄牛の顔を形作っています。
 ただしアルデバラン自身は、かなり地球に近いところにあり、このヒアデス星団には属していないようです。偶然同じ方向に見えているだけです。
 

 さてこのような散開星団の星というのは、いずれもほぽ同じ時期に生まれ、一群となってある方向へ運動しています。
 それぞれの星を長年追跡すると、星団全体が向かっている収束点が天球上の一点に定まります。

 右の図は、ヒアデス星団のメンバーの固有運動のようすです。天空上のある点に向かって収束していくことがよくわかるでしょう。

 「おぉ、これはバン・ベーレン殿のデータではないか。」
 その通りです。オランダのライデン天文台長
HGVan Bueren さんが、実視 9.0 等までの 159 個について固有運動と視線速度を詳細に調べて、1952 年に発表したものです。

 ベクトル矢の長さは 18000 年間の動きを現しています。しっかしまあ、これだけのデータを揃えるまでには相当な根気が必要だったと思いますよ。

 ただし残念なことに、この図に表されているベクトルはあくまでも天球上の (地球からの視線に垂直な方向の) 移動量であって、距離がわからなければそれがどの程度の速度であるかは分かりません。

 

 そこで、今度は固有運動の視線方向成分 (地球から遠ざかる速さ) を、例の ドップラー効果 によって測定します。そのためにスペクトルデータが必要なんですね。水素輝線のずれによってドップラー量を判定するんです。

 ドップラー効果って、ほら救急車が近付くときのサイレンはピィーポォーって甲高く聞こえるけど、目の前を通過した途端にブィーブォーって音が低くなるでしょう。

   【 ドップラー効果 】 音源が近付く方向の波長は縮み、遠ざかる方向では波長が長く(振動数が低く)なる。

 光も同じように、遠ざかる星から出る光は、わずかにその波長が長くなる。すなわちスペクトルがやや赤色側にずれる (赤方偏移) わけです。そのずれの度合いから、少なくとも地球に対する視線方向速度成分は定量的に求まります。

 これと収束点の方向から実際の速度を求めます。すると1年間に実際に天球上を動く角度から、その星団までの距離を見積もることができるというわけです。

 って言いながら、自分でも思うよ。分かりにくいだろうなあ、こんな説明じゃ。ハッブルさん、助けてくださいよ。

 「いかにも。おまえさんの説明は、はっきり言うが極めて分かりにくい。こういうのは図に書けば何と言うことはない。」
 はあ、そうでしょうけどね。済みませんが書いて頂けますか。
 「お安い御用である。チャッチャッチャっと。これでどうじゃ。」

 あ、なぁるほど。さぁすが宇宙論の第一人者。
 この視線方向と収束点方向との間の角が共通ってところが味噌なんですね。とっても分かりやすいです。
 「味噌なんかどこにも使っておらんぞ。ペーパーには書いたがペッパーも使っておらん。」

 いえいえ、こうして求めたヒアデス星団までの距離は、149±2.6光年。これはたんなる推論どころか 実測値 ですから、観測精度さえ上がれば正確な星団の距離が確実に決定されるわけです。

 このやり方を 運動星団視差法 とも言います。この方法で、人類は約 600700 光年までの距離を測る手段を手に入れたことになります。

 おうし座にはもうひとつ、有名な散開星団があります。そう、清少納言が枕草予のなかで一番美しい星と言った 「プレアデス星団」 (日本名「すばる」) です。よくご存じですね。非常に若い星々の集団です。

【プレアデス星団 M45 Mel.22】 Pleiades Clustar
 肉眼でも普通個の星が見えますが、写真に撮ると 100 個以上の星と、その星々の光を反射してかがやく星雲状物質 (メローペ星雲) が拡がっていて、それはそれはうっとりとする眺めです。


 右図は二間瀬敏史先生の本に掲載された、ヒアデス星団とブレアデス星団の
HR 図 (ヘルツシュプルング・ラッセル図) です。
 縦軸に絶対等級 (光度階級)、横軸にスペクトル型をとったこの図において、左上から右下に帯状に分布しているのが主系列星です。

 ヒアデス星団は、固有運動の観測からその距離がわかってしまいましたので、見かけの明るさから絶対光度を知ることができます。
 プレアデス星団の主系列星も同じような分布をしていますが、見かけの明るさがヒアデス星団よりも
等級ほど暗いですね。

 この等級の違いが距離の違いを表しているとすれば、等級が1等級違うと距離は約1.6倍違う ので、プレアデス星団はヒアデス星団よりも 4.8 倍ほど遠いことがわかる。
 つまりすばるの星々はおよそ
715 光年となります。

 同様にして、距離のわからない星団に対して、その星団の主系列星とヒアデス星団の主系列星を比べることによって、その星団がヒアデス星団の何倍遠いかを見積もることができるわけです。

 この方法を使うと約 15,000 光年までの距離を測ることができるんですね。
 「ただしそれが散開星団で、主系列星を多数含んでいることが条件じゃがのう。」

 あ、そうか。ちゃんと前提を押さえて説明しておかないといカンです、冷やデス。
 「おまえさん、頭、大丈夫か。」

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