ローレンツ変換係数の求め方
◎ ガリレオ変換(絶対時間)
等速で運動する座標系を、他の座標系から見たときに表現するための式を求めます。最初にこうした相対的原理をまとめ上げたのはガリレオ・ガリレイです。
ただし当然ながら、その時代には時間の相対性というような発想はありません。どちらの系から見ても時間の進み方は、もちろん同じと信じられていました。ですから数式上でも、tは共通変数として扱います。
ある慣性系に観測者Aさんが静止しています。この人から見た座標系を
S系 とします。原点はO点で、ある点Pの座標値は
X,Y,Z、時刻はtで表されます。
いま、原点Oをスタートし、X軸正の方向に向かって速さVで走っている観測者Bさんを考えます。この人から見た座標系を
S’系 と呼びましょう。この座標系における座標値は
X' ,Y' ,Z'、時刻はt'で表します。
しかし座標系が変わろうとも時間は「当然」両者共通なのですから
t'=t ……………… @
です。時間tが経過したとき観測者Bから見た点Pを表現したとすると上図からわかるとおり、
X'=X−Vt ……………… A
Y'=Y ……………… B
Z'=Z ……………… C
となりますよね。この関係を「ガリレオ変換」と言います。
この式を使って座標変換をしてやりさえすれば、等速運動をしているどの空間であっても、全ての物理現象は同じ考え方で表すことが出来るというわけです。
私たちが高校で習った全ての力学(ニュートン力学)はこの変換を基にして成り立っていたのです。A式は、物理の教科書の一番最初に出てくる公式です。
◎ ローレンツ変換(絶対光速)
しかしアインシュタインがこだわったのは、はたしてtを共通変数にしても良いのかということでした。代わりに彼は、光の速さCを共通定数だと仮定して、この相対的原理を考え直してみたわけです。
まず観測者Aさんの慣性系
S系 において考えます。いま時刻
0 に座標系の原点Oから光が放出されたとします。
時間t後には光は原点を中心とする半径
r=Ct の球面に達しますね。その球面の方程式は、本来は
r2=X2+Y2+Z2=(Ct) 2
なのですが、簡単のために、Y=Z=0 の線上のみを考えていきましょう。そうすると
X2=(Ct)2
と書けます。つまり、光がX方向にのみ走ったと考えれば良いんですよ。
原点Oをスタートし、X軸正の方向に速さVで走っている観測者Bさんを考えます。今度はガリレオ変換のときとは違い、
t'=t
という前提は置かずに、代わりに光速は両座標系で共通とするわけです。
Bさんから見た座標系
S'系 での球面の方程式は
X'2=(Ct')2
です。ここでガリレオ変換
X'=X−Vt
およびその逆変換(XをX'で表す)
X=X'+Vt
において拡張係数を α として
X'=α(X−Vt)
……………… D
X=α(X'+Vt)
……………… E
であると仮定しますと、光速度は一定なのだから、S,S'系で光は
X=Ct
……………… F
X'=Ct' ………………
G
に達していることになります。
E 式に F G 式を代入すると
C2=αX'(C+V)
を得ます。これに D 式を入れると
C2=α2 (C2−V2)
となりますから、ローレンツ変換の係数
が求められるんです。
「なっとくする相対性理論」
松田卓也 二間瀬敏史 講談社 より
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